京都、嵐山旅館の若旦那は記憶喪失彼女を溺愛したい。

純一の話を聞いている間に、あっという間に1時間30分は過ぎてしまった。


「ごめんなさい。つい興奮してしまって」


「いえ、とてもおもしろい漫画やアニメがあるんですね。私もお店にいくのが楽しみになりました」


駅に降り立った私達はまっすぐにセンタープラザへ向かった。


ここが三宮のオタク街と呼ばれている場所だ。


ビルの中に一歩足を踏み入れると外界と社団されたような雰囲気を感じる。


アニメと大きく看板に書かれているお店やゲームセンター、それにフィギュア専門店などが入っていてどこのお店にも沢山のお客さんがいる。


「すごい熱気ですね」


「この雰囲気大丈夫ですか?」


心配そうに言われて春菜は笑って頷いた。


熱気に驚いたけれど、このお祭り騒ぎのような雰囲気は好きだった。


純一にはお目当ての店があるようで、真っ直ぐ本屋へと足をすすめる。


「あった、よかった」


本屋ではすぐに購入するべき本を見つけたようで、大事そうに両手に持つ。


「本なら地元でも買えるんじゃないんですか?」


「普通の本ならそうですね。だけど特定の場所にしか流通しない本もあるんです」


そう言って表紙を見せられるとシュリンクされた内側に「サイン付き」というメモ用紙のようなものが挟まっていた。


「こういう本は全国の書店には出回らないんです。なんていっても作者の直筆サイン付きですからね。初版何十万部という人気作品すべてにサインを入れることはできないでしょう?」