「はい」


「でもさ、こんなに可愛いんだから過去なんて思い出さなくていいんじゃない? ここなら仕事もあるんだし!」


皐月はそう言って豪快な笑い声を上げた。


純一が春菜の隣でため息を吐き出している。


「記憶がないままじゃ困るのは春菜さんだ。お前は余計なことを言うなよ」


「はいはい悪かったわね。じゃ、春菜ちゃん、またね!」


皐月さんは大きく手を振って隣の吉田旅館へと戻っていったのだった。


なんか嵐みたいな人だったなぁ。


春菜は吉田旅館へ入っていく皐月の後ろ姿を見送って苦笑いを浮かべたのだった。