「あの、純一さんに謝ったほうがいいですよね?」


スタスタと歩いていく美鈴の背中に声をかけると、美鈴は足を止めずに一瞬だけ振り向いた。


キツネのような細面の目がスッと細められる。


「若旦那は今地域交流センターで会合中です」


「そ、そうですか」


旅館で働いているからと言って仕事はそれだけじゃない。


地域交流は大切な仕事のひとつだ。


それにしても早い時間から集まるのだなと思っていると、廊下のカーペットが少しよれていて足をひっかけてしまった。


慌てて体制を立て直して、カーペットを直す。


「そんなにボーっとしてちゃ、すぐに首になりますよ」


美鈴さんは冷たい視線で春菜を見下ろしていたのだった。