その言葉に顔を上げると、純一の頬が赤く染まっている。


それって、どういう意味?


と、質問する前に純一の顔が近づいてきて、唇を奪われていた。


薄くて、でもとても柔らかな純一の唇に心臓が止まってしまいそうになる。


胸の奥から熱いものがこみ上げてきて、全身をくすぐる。


キスだけでこれほどこみ上げてくる好きを感じたことは初めての経験だった。


「春菜さんは、僕のことが好きじゃない?」


少し身を話してそう質問してくるのはいじわるだ。


キスをされて、それを受け入れた時点で気がついているはずなのに。


「好きです。大好き!」


感情が抑えきれず、膝立ちになって純一に抱きついた。


純一の両手で春菜の背中に周り、キツク抱きしめる。


「僕と付き合うということは、将来女将になるかもしれないってことだよ」


「わかってます」


「修行となると、今の何倍も大変だ」


「頑張ります!」


「君のあこがれのウエディングドレスは着れないかもしれない。白無垢だから」


そこまで言われて春菜は一度純一から身を離した。


純一と自分の結婚式の様子を想像してみる。


それは誰よりも素敵で、幸福な瞬間であることに間違いがなかった。


だって、今でも自分はこれほどまで幸せを感じているんだから。


「白無垢も素敵」


そう答えると、春菜は自分から純一に口づけをしたのだった。