だけど話をしている間に感情が溢れ出してきて何度も言葉をつまらせ、涙を流して嗚咽した。


そのたびに女性は春菜の背中を擦ってくれて、自分のことみたいに目に涙を浮かべて話を聞いてくれた。


気がつくとテーブルの上のビール缶は6本になっていて、互いに3本づつ飲んだことがわかった。


『話を聞いてくださってありがとうございました』


少しロレツが怪しくなった声で春菜が言う。


そろそろ辞去しないとこれ以上の迷惑はかけられない。


『ちょっと、どうせだからうちに泊まって行きなよ』


お店の方へ回ってみるとガラス張りの入り口の向こうがすでに薄暗くなってきているのがわかった。


もう1時間もすれば真っ暗になってしまうだろう。


一瞬女性の好意に甘えようかとも考えたが、この時間ならまだアパートまで帰れると考えた。


『いえ大丈夫です。今日はほんとうにありがとうございました』


『あらそう? こっちこそ色々聞いてごめんね。よかったら、また来てね』


それから春菜は何度も振り返り、女性に手を振って駅へと向かった。


今日これだけ遊んだのだから明日の朝にはきっと頭はスッキリしているはずだ。


電車に揺られながら春菜は眠りに落ちたのだった。