京都、嵐山旅館の若旦那は記憶喪失彼女を溺愛したい。

☆☆☆

どうにか無事にアパートまで戻ってきた春菜はすぐにでもベッドに入って眠ってしまいたかったが、どうにか目を開いてテーブルの前に座っていた。


テーブルの上には白い便箋とペンが置かれている。


『あんなことするなんて、最低』


田島のやったことを思い出すとジワリと涙が浮かんでくる。


尊敬する上司だったからこそ、強いショックが春菜の胸に突き刺さっていた。


ぐずぐずと鼻水をすすり上げながらペンを持ち、真っ白な紙に『辞表届け』と書いていく。


その文字があまりにも不格好なので思わず泣きながら笑ってしまった。


それでもペンは止めなかった。