失言を反省し、もう何も言うまいと自らの思考に集中する事にした。

 そこでふと、至極単純な疑問がわいた。

 ーーそういえば。何で栞里ちゃんがここに居るんだろう?

 彼女はなおも気まずそうな顔で雨が打ち付ける外を見ていた。

 俺は高校からの帰り道でこの電話ボックスの前を横切るけど、彼女がこの道を通って家庭教師先の俺の家に来るというのはいささか無理がある。

 栞里ちゃんが通う大学は高校と真逆の方向に位置しているし、こっち方面は住宅街だけで駅もコンビニもない。

 ーーもしかして……栞里ちゃんも俺と同じ目的で?

 その考えに至ると、途端に胸がざわついた。先客()を気にして、挙動不審だった行動にも合点がいく。

 ーー誰かを想い、わざわざこの電話ボックスへおまじないをするために来たのだとしたら……。

 もしかしたら俺はマゾなのかもしれない。

 キリキリと締め付ける心臓の痛みを無視して、彼女に真意を確かめたくなった。

「なんでこの電話ボックスだったの?」

「えっ!?」

「いや、雨宿りの場所。この先歩いても特別何も無い住宅街だし、俺らの高校があるだけだし」