8月25日(後編)

そう言って立ち上がる慧くん。

「あ、えっと…じゃ、わたしも帰るっ」

と立ち上がると驚いた表情をされた。


「紗良ちゃん、次っていつ時間作れる?」

「え、」

「次はちゃんと約束して会いたい。色々話したいこともあるし」

「……」

「嫌、かな?」


俯く顔を覗きこんでくる慧くんにドキッとする。

あの頃もよくそうやって覗きこんできてたっけ。

そういうことさえも、今は懐かしく感じてしまう。


「もし、時間作ってくれるならここに連絡して?スマホ変えて番号とか変わったから、これが新しい番号」

とメモ用紙を渡された。


そのまま何も言うでもなく、居酒屋を出て行った慧くんの後ろ姿が忘れられずにいた。


もちろんわたしだって話したいことは山のようにある。

でも、気持ちが追いつかない。


ドキドキドキドキ…

今はこの鼓動をしずめるのが精一杯だ。


それからアパートまでどうやって帰ったのか記憶は曖昧だった。