8月25日(後編)

「今日、慧のこと話そうって思ってた」

「…うん。だろうと思ってた」

だから、ここで慧くんの名前が出ることに驚きはしない。


「俺、慧と会ってたんだ」

「帰ってきてるんだもんね。友達なら普通会うよね」

「そうじゃなくて、20歳の誕生日の時」

「えっ…」


20歳の誕生日?


でも、その時はまだ向こうにいるはずじゃ…?

「一度こっちに帰って来てたんだ、慧」

「…それで?」

「夏目さんの誕生日に渡してほしいって頼まれてた物があったんだけど…渡せなかった」


あー…クラクラしてくる。


これはお酒のせい?それとも……。

「渡すつもりでいた。でも…」

「でも?」

「もう夏目さんの中に慧はいなかった。あの日、そう言ったこと覚えてる?」

「……うん」


もちろん覚えてる。

慧くんの存在を無理矢理わたしの中から消してたから。