8月25日(後編)

スーツ姿ではあったけど、スラーっとした高身長にあの横顔…

慧くんそのものだった。


わたしが知らないだけで、日本に帰ってきてるのかも!って…

さっきはそう思った。

だけど、冷静になるとそれは有り得ないんだよね。


だって、ケビンも平野くんも何も言ってこない。

「帰ろ…」

一気に疲れた足を動かす。


その道中でふと考える。

もし、さっきの人が慧くんだったらどうなっていたんだろう?

もう何年も会っていないわたしから呼び止められた慧くんは、どんな反応をしただろう?


何より、わたしは何を言うつもりで追いかけたの?


今さら何を……。

そう考えると、見間違いでよかった。

慧くんと話すことなんて、もうないから。



アパートに着き、買い物袋から卵を取り出すと、見事に全て割れていた。

「最悪」

悲惨に割れた卵が、今の自分のように見えて嫌になる。