「………指輪」 「え?」 二階堂の表情が固まったことに気付き、私は我に返る。 "指輪"なんて、言うつもりじゃなかった。 思わず、そんな言葉が零れてしまっていた。 何でこんなことを言ってしまったのだろう。 「なーんて、嘘ですよ」 私は冗談めかして笑う。 「二階堂さんからもらえるなら、なんでもいい」 「…そうか、じゃあ考えてみるよ」 「ありがとう」 私は二階堂の胸に抱かれながら、左手薬指にダイヤの指輪がきらめく、幸せそうな姉の笑顔を思い出していた。