「ごめん。真剣に考えている顔がかわいかったから、つい」

 進藤さんは看板を指さし、隠されたメッセージを読み解いていく。

「俺も真剣にやるよ。渦巻きだけじゃなく、なにか規則性が……ああ、こういうことか」

 呆然としていた私は、彼が解いた謎の答えを聞いて我に返った。もう、いきなりドキドキさせるのは反則だよ。

 初めての謎解きは頭を悩ませる問題もあったけれど、私がひらめかないときは進藤さんがひらめき、進藤さんがさっぱりなときは私が考えついたりした。

「なんだか、すごく楽しくなってきました」

 ふたりで肩や頬を寄せ合い、同じものを見て考え、あーでもないこーでもないと言い合うのは、意外に楽しかった。

 謎が解けたときの喜びというか、スッキリ感は、普段家にいるだけでは味わえない。

 ただ……歩く距離が、長い。息が切れた。

「そうか、それはよかった。けど、俺は少し疲れた。どこかで休もう」

 優しい声音から、気を遣われていることがなんとなくわかった。

 時計を見るとちょうど正午を過ぎた頃。空腹も限界を超えていた。血糖値が下がりすぎたのか、手が震えて汗が出てきた。