仕方がないので、ノンシュガーのガムを嚙んで空腹を紛らわしていると、スマホが鳴った。
朦朧としていた頭が覚醒する。届いたのは、進藤さんからのメッセージだった。
【来週の日曜、デートしないか】
来週の日曜。慌ててシフト表を確認する。
よかった。今週の土日は勤務だけど、来週は休みだ。
その旨を連絡すると、【詳しいことはまた連絡する】と返ってきた。
【了解】と【おやすみなさい】という絵柄のスタンプを返し、スマホを置いた。
よし、来週の日曜までに、絶対痩せてやる。今よりきれいになってやる。平日の休みに服を買って、傷んだ髪を切ろう。
今度こそ、ちゃんとした私で、進藤さんに会うんだ。
決意した私は勢いよく立ち上がり、ストックしてあったお菓子類を、とっておいたレジ袋に放り込んだ。
これは病棟の皆さんに差し入れしよう。私はたった今、本気の本気になったのだ。
袋の口をぎゅっと縛り、玄関に置いた。
ベッドに戻って明かりを消し、目を閉じてじっとする。
進藤さんの顔を思い浮かべると、空腹の切なさを忘れることができた。