なにか看護師に用があるのかと思って声をかけてみたけど、彼はこっちを見ただけで、ぷいっとホワイトボードの方に向き直った。
あれ? 今、ちゃんと聞こえてたよね。無視されちゃったみたい。
ドクターは変わっている人や偉そうな人も多い。多分この人も看護師をバカにしているのだろう。
じゃあ、いいや。ご自分で解決してくださいな。
無視されてまで、新人研修医の世話を焼いてあげる義理はない。私は忙しいのだ。
「ちょっと通りまーす」
ホワイトボードの向こうに、患者さんの薬が入っている配薬車があるのだ。
採血のついでに、痛み止めを欲しがっていた人にその薬を出さなければいけない。
ドクターの背後を余裕で通り抜けたつもりだったが、彼が急に一歩後ろに動いたので、ぶつかってしまった。
「あ、すみま……」
「邪魔なんだよ、デブ」
まるで汚いものを見るような目でこちらを見下ろす研修医の名札には『原瑞樹』と書かれていた。
まるで韓国アイドルみたいに、軽いパーマをあてた髪を真ん中分けにしている。イケメン風だが、あくまで風、だ。憎たらしい顔に怒りが湧いた。



