控室のようなところに連れていかれると、店長さんの奥さんらしき美人さんが私のボサボサの髪にオイルをつけてぱぱっと巻いてくれて、小さな飾りが並んだカチューシャをした。赤いリップを塗られ、『完了です!』と肩を叩かれた。
そんなわけで、すっかり変身させられた私が今いるのは、港の夜景が見えるレストランなのである。
「あのお店の人って」
「メンズもあっただろ? あの店の服が好きでね。店長と自然と仲良くなった。奥さんは動画サイトで活動しているんだ」
ちらっと見たけど、あのお店の服はただのシャツで四万円くらいしていた。そんなのをたびたび買いにきてくれるお客だもの。大事にされるに決まっている。
奥さんはいわゆる美容系動画を配信している人らしく、そこそこ有名なのだとか。すっぴん同然でいた私を見て、腕が鳴ったらしい。
常連さんの連れがこんなぽちゃ子で、びっくりしただろうな。
「あの……ごめんなさい。今日は持ち合わせていないんですけど、ちゃんと払いますから」
状況を飲み込めないうちに、あれこれ先生に買わせてしまった。値段を考えると冷や汗が出る。



