ぽっちゃりナースですが、天才外科医に新妻指名いただきました


 うつむいたまま駐車場から、そして敷地から無事に誰にも見つからずに脱出した。

「ふう……」

「で、なにを食べに行こうか。特に予約もしてなくてすまないんだが」

「はい?」

 仕事が定時で終わるかどうか、その日にならないとわからないのに、予約はできないよね。って、そういうことじゃなくて。

「本当に行くんですか? 私、こんな格好ですってば」

 お見合いのときとは違い、きらびやかな着物もない。髪はボサボサ、化粧はノーカラー。

 眉毛とマスカラだけはちゃんとしていてよかった。

 病院では派手な化粧はダメという規定があるため、アイシャドウもブラウンやベージュくらいしか使えない。リップもあまり鮮やかな色はNG。

 でも、デートだってわかっていたら、チークくらい持ってきたのに。

「きれいな格好で、俺に会いたかった?」

「そりゃあそうですよ」

 誰が汚い格好で、男性とふたりで食事に行きたいものですか。

「よかった。ちゃんと男性として意識していただけているようだ」

 クスクスと笑う進藤先生の横顔にキュンとして、その後爆発的に恥ずかしくなった。

 私、先生のことをバリバリ意識している。言われて初めて気がついた。