しかも、私の体の中で唯一女性らしい長い髪は一日中ひっつめてシニョンにしていたせいで、変なくせがついてしまっている。
更衣室で直そうとしたけど、鏡の前はあいにく先客で埋まっていた。
この格好を見たら、百年の恋も冷めちゃうよ。女子同士でロックフェスに行くならまだしも、婚約者と初めてのデートでこれはない。
「うん、やっぱりダメだ!」
っていうか、ぽっちゃりにしゃがんだ姿勢はつらい。よっこいしょと立ち上がり、スマホを持った。そのとき。
「ぶっ」
ちょうど車の正面に来ていた進藤先生と、目が合ってしまった。彼は私の方を見て笑っている。
「青くて丸いものが見えるからなにかと思えば、君か。どうしてそんなところから出てくるんだ」
こらえきれないといったふうに、肩を震わせる先生。
しまった。隠れていたつもりだったけど、大きなお尻が見えていたのか。
「だって、誰かに見られたら気まずいから」
「そうかそうか。待たせて悪かった」
今日はお断りして、後日ちゃんとした服で会いたいと思っていたのに。見つかってしまった。
進藤先生は私の服のことなど、まったく気にしていないようだ。



