ぽっちゃりナースですが、天才外科医に新妻指名いただきました


 そんな風に言われて、うれしくない看護師はいないと思う。

「わかりました。自虐はやめます」

 周りに気を遣わせていると言われたのが、かなりこたえた。

 優しい後輩たちは、かなり微妙な気持ちで、正直面倒くさかったことだろう。反省しかない。

「素直でよろしい。俺は君のそういうところが好きだよ」

 くしゃくしゃと髪を撫(な)でられ、なんだか安心した。進藤先生は目を細めて淡く笑っている。
やっと頭を上げたとき、信号は青になっていた。

「落ち込む必要はない。なあ、帰宅前にどこかで食事をしないか」

「えっ」

「勤務後だから腹が減っているだろう? 今日はもっと気取っていない店で」

 と言っても、今の時間に開いているのは居酒屋くらいしかない。

「先生、明日お仕事なんじゃ?」

 明日の手術予定表に、しっかりお名前が載っていたような気がしますよ。

「そうだけど、もう少し君のことを知りたい」

 いやいやいや。仮にも外科手術するドクターが睡眠不足でいいわけないでしょう。

 一緒にいたいと言われているようで、少しうれしくて照れくさい。

 私だって、もう少し進藤先生と一緒にいたい。もっと、先生がどんな人か知りたい。

 でも、我慢だ。先生には、私とは比べ物にならないくらいの責任がある。