ぽっちゃりナースですが、天才外科医に新妻指名いただきました


 進藤先生と一緒にドライブしているところを誰かに見られたら……なんてヒヤヒヤしたけど、誰ともすれ違わなかった。

 すれ違ったところで、白衣を脱いだ先生と、シニョンをほどいた私じゃ、職員もわからないかもしれないけど。

「いつもひとりで駅まで歩いているのか?」

「そうです」

「危ないな。毎回送ってやれるといいんだが」

 進藤先生にも当番があるので、私が遅番のときに毎回合流できるとは限らない。

「大丈夫です。毎回は申し訳ないですよ」

 明日も出勤ならば、朝早いはずだ。

「私のことを襲う人なんていませんし」

 あははと笑ってみせたが、進藤先生はぎろりとこっちをにらんだ。運転中だから、眼球だけ一瞬動かして。

「そういう自虐はいらない」

 バッサリ言われた。

「君は、自分に自信がないから、誰かにけなされる前に自分で体形のことをネタにして笑わせて、それを盾にしているつもりなんだ」

「う……」

「しかしそれは、まったく防御になっていない。知らず知らずのうちに、自分を傷つけている。他人に傷つけられるよりは浅くて済むが、傷痕は残っているはずだ」

 心臓を素手で掴まれたような気がした。