「美容目的じゃないんですか」
「人は好きなことのためじゃないと、頑張れないのよ」
私は仕事が好き。結婚しても、子供ができても、看護師を続けたい。
そのためには体力が必要だ。そして。
さっき、思ったのだ。
進藤先生の目に、自分のまん丸い顔が映って、ショックだった。
藤井さんの顔と比べたら、自分の顔のムダな面積のなんと多いことか。
せめて、顔と首の境目くらいははっきりさせたい。
もう少し自分に自信が持てないと、彼の婚約者を名乗れない。
「なあんだ。好きな人でもできたのかと思いました」
藤井さんが笑顔で言うので、不覚にもドキリとしてしまう。
「私に恋なんて似合わないよ」
自慢じゃないけど、恋愛経験はゼロに等しい。
「そんなことないです。千紗さんはかわいいし、優しいし、面白いので、絶対にモテると思います」
「あはは、ないない。でも褒めてくれたから、後で私のお気に入りのお菓子あげるね」
「もう。本気なのに」
藤井さんはこの前も、私の弁護をしようとしてくれた。いい後輩に恵まれて私は幸せだよ。
よし、今日も笑顔で頑張ろう。
ぽっちゃりは愛想よくしておかなきゃね。むっつりぽっちゃりじゃ、誰も得しないもの。
私は両頬を自分で強く叩き、気合を入れた。



