「あああ、そうですね。半分は休憩していて、半分はおむつ交換に回っているので。私も早く行かなきゃ」
お昼は交代で休憩をとるため、人員が少なくなる。今もナースステーションには誰もいない。ナースコールが鳴ると、スタッフの医療用PHSに繋がるようになっている。
「そう逃げなくてもいいだろう。とって食べたりしない」
微かに口の端を上げる進藤先生の瞳に、自分が映る。途端に、今まで感じたことのない恥ずかしさがこみ上げた。
「緊張しちゃうんです。あの、誰かに用事ですか?」
「いや、今日はまだ患者さんのところに行けてないから」
進藤先生は毎日一度は必ず、担当患者の病室を回る。滅多に病棟に姿を見せず、指示だけ出すドクターも多いというのに。
「そうですか。お邪魔しました。じゃっ」
私は他の看護師と一緒におむつ交換をするため、その場から去ろうとした。そのとき、進藤先生に手を掴まれて止められてしまった。
「婚約のこと、本気だから」
誰もいないのをいいことに、じっと私を見つめてそんなことを言う進藤先生。
白衣だと、イケメンの威力が三割増しになる。ずるい。



