中尾主任はシリアルを大きなヨーグルトパックに入れて食べている。ヨーグルトは半分ほど食べたものを、家から持ってきたのだろう。
普通に美味しそう。これだったら、私もできるかも。
「いいや、ヨーグルトは無糖だし、シリアルは豆が多いから美味しくはないよ」
がっくりと肩が落ちた。
甘かった。やっぱり、楽して体形維持する方法なんてないんだわ。
たとえ一食でも、美味しくないものを食べて過ごすなんてムリ。
「ストイックですねぇ。すごいや」
荷物をロッカーに入れ、仕事に行こうとした私に、中尾主任がのんびり言った。
「俺も好きなことのためじゃないと、頑張れないよ。じゃあ行ってらっしゃい」
「あ、はい。午後からよろしくお願いします」
休憩室を出て、割当表を眺める。
いつもなら、一歩ナースステーションに入った途端に仕事モードに切り替えられるのに、今日はなんだかぼんやりしている。
「好きなことのためじゃないと、か」
中尾主任はいつまでも大好きな自転車に乗りたいから、体づくりを真剣にできるのだ。
じゃあ、私は?
「この時間は、いつも誰もいないな」
「わあっ」
突然、真横から声が聞こえ、驚いてのけぞる。いつの間にか進藤先生が隣にいた。



