「は、はは。頑張ります……」
『うん。じゃあね。あ、茉莉からなにか連絡が来たら教えてね』
「わかりました」
通話を終え、膝の上にスマホを置いた。
「はあ~」
自然とため息が出る。
正直、婚約や結婚なんて、ちっとも考えたことがなかった。
片想いでもいいから、恋愛ができたら楽しそうだな~と思ったことはあるけど。
それよりも、まだまだ看護師として学びたいことがたくさんある。
「もうひと眠りするか」
考えても仕方ない。そのうち進藤先生の目が覚めるかもしれない。
そうだよ。昨日は髪もメイクもバッチリとしてもらって、鮮やかな振袖を着ていたもの。普段より五割増しくらいに見えていたかも。
それに比べ、仕事中はメイクは薄め。ほぼすっぴんに近い状態で、おくれ毛が出ないように髪をひっつめてしばり、体の線が出る制服を着る。
細い子が着ればかっこよく見えるが、ぽっちゃりさんは腹の段差とか、太もものむちむち具合がはっきり出てしまうのだ。
布団をかぶり、眠れるだけ眠ろうと目を閉じる。
二度寝して、目が覚めたら全部が夢だった……というふうにはならなかった。
二時間後に起きた私は、朝昼兼用の食事をがっつりとり、しぶしぶ病院に向かったのだった。



