しかし、進藤先生にとっては、とんでもないプレッシャーだろう。
もし本当に結婚したら、私は孫を産むことをあのご両親にせっつかれるのか。ちょっと気が重いな。
そういえば、お見合いでふたりきりになった後、お互いのことを少し話したっけ。
進藤先生は長男で、お姉さんがひとりいるが、医療機器メーカーの御曹司の家に嫁いだらしい。
ということは、進藤家の孫を望めるのは、進藤先生しか残されていないというわけだ。
お姉さんは気の強い人で、自分の子を進藤先生の養子にするとか、そういうことは一切受け入れないらしい。
そりゃあそうだ。自分のお腹を痛めて産んだ子を手放したいと思うはずない。恵まれた環境で育てられるなら、なおさらだろう。
「実家の圧が強い……。私、うまくやっていける自信がありません」
『なに言ってるの! 玉の輿に乗れるのよ、千紗ちゃん。もっと喜んで』
子供ができなかったりしたら、玉の輿というよりむしろ、針の筵に乗るようなものだ。むしろと筵。うまいこと言ってる場合じゃない。
本当なら、茉莉ちゃんが乗るかもしれなかった玉の輿だ。おばさんも本当は色々と複雑な思いがあるのだろう。



