原研修医に藤井さんが絡まれたときのことか。そこまで聞かれていたとは。
恥ずかしいやら、照れくさいやら、複雑な思いだ。
「ほんっとうに、私でいいんですか? 婚約で、いいんですか?」
じっと見つめると、進藤先生は唐突ににこりと微笑んでみせた。
「ああ。君がいい」
ちょっと、その笑顔でそのセリフは反則でしょう! 最終兵器でしょう、それ!
進藤先生がここまで真摯に私と向き合ってくれるなんて。仕事をしている私も、それ以外の私も受け入れようとしくれる人は今までいなかった。
私も、ちゃんと彼と向き合いたい。もっと彼のことを知りたい。
「じゃ、じゃあ……よろしくお願いします」
先生の笑顔から発されるオーラにあたってクラクラした私は、いつの間にかそう返事をしていた。
顔が熱い。恥ずかしくなってうつむくと、テーブルの上に置いた手を優しく握られた。
「ありがとう。よろしく頼む」
目を細め、口角を上げている先生が眩しすぎて、直視できない。
ああ……えらいことになってしまった……。
キラキラした進藤先生の笑顔の前で、気が遠くなりそうだった。



