「君は今まで俺が出会ったことのない人間だ。だから、もっと知りたいと思う」
テーブルの上で指を組み、進藤先生は私に言い聞かせるように、ゆっくりと落ち着いた声音で話しかけてくる。
「繊細なようで、人目を気にせず食事を平らげる豪快さも気に入った。俺に媚びを売らないのもいい。人生を共にするなら、君みたいな興味深い人と過ごしたいんだ。相手によって態度をコロコロ変えるやつはもってのほかだな」
それって原研修医みたいな人のことか。
自分より弱い立場の人にはつらくあたり、強い立場の人には媚びへつらう。
看護師もそうだ。ドクターには敬意を払うけど、掃除のおばちゃんや看護補助者さんに偉ぶった態度をとる人もいる。
きっとこういうお見合いでも、彼の職業や家柄に惹かれてやってきた女性たちの作り笑顔をたくさん見てきたのだろう。
「というわけで、どうだろう。まだ返事を聞いていない」
「えっ」
返事って、さっきの『婚約者になってくれませんか』の返事だよね?
じろじろと進藤先生の表情を観察するけど、からかっているような様子はない。
だとすると本気なの?



