彼の眉間に皺が寄った。

 たしかに、患者さんを見ていると本当に色んな人がいると思う。本当にいい人もいれば、看護師のやることなすことすべてにケチをつけてくるような意地悪な人もいる。

「要するに、私の裏表がなさそうな内面に興味を持っていただいたと」

「そういうことだ」

「そんなに話したこともないのに。私だって、多少裏表はありますよ」

 進藤先生とまともに接したのは、原研修医の一件のときと、今くらい。それも話はしていないし、今なんてもりもり料理を食べていただけなのに。

「実は、患者さんからよく聞いていたんだ。高場さんという看護師さんは、忙しくても嫌な顔をせずに要望に応えてくれるって」

 話をするうち、先生の眉間の皺が和らいだ。

「そして師長さんも、君を褒めていた。君は仕事に真面目なだけでなく、素直で、周りのみんなを明るくしてくれるって。でも変な忖度をしたりしないと」

 あまりに優しい顔をした先生が私を褒めちぎるので、恥ずかしくなってしまった。

 患者さんに優しいのは仕事だからだし、明るくしているといってもお笑いキャラなだけだし、忖度は……たしかに、しないな。だってそういうの嫌いだもの。