「そうだな。しかし、あれほど自分を卑下することはなかったんじゃないか?」

「卑下……ああ、太っていると認めたことですか? 事実ですから、否定することもありません。悪いことをしているわけではないんで」

「たしかに、悪いことはしていない」

「看護学生になって太り始めて、それからずっとこの体形なんです。だから、ああいう悪意をぶつけられるのも慣れています」

「そんなことはないだろう。女の子なんだから」

 いたわるような視線が胸に突き刺さった。

 女の子なんだから。

 そんなこと、太る前から今まで言われたことがなかった。

 太ってからは余計に体形をいじられるばかりで、いつからか心が麻痺していた。

 笑いをとるか受け流しておけば、自分も周りもハッピーだと思っていた。

 でもそれは本心じゃなくて、自分が傷つかないよう笑いという盾でガードしていただけなのかもしれない。

「あんな不愉快なことは忘れよう。それより大事な話をしようじゃないか」

「大事な話?」

 すっかりケーキを食べる意欲が薄れた私は、フォークを置いて先生を見つめる。

 先生はすっと背筋を伸ばし、私を真正面から見据えて言った。