「出血もないし、痛みもおさまりました」

「それはよかったです」

「看護師さんも食事に気をつけた方がいいよ。痔は痛いからね」

 体温と血圧を測り、電子カルテに記入していると患者さんがしみじみと言った。彼もぽっちゃりしている。食事の偏りから便秘になり、痔になったらしい。

 私の体形を見て、食生活が荒れていると思い心配してくれたのだろう。

「痛かったですよね。私も気をつけます。今は大丈夫でも、後で痛むこともあります。痛み止めが必要なときはおっしゃってください」

 そう言って笑顔で病室を去る。

 暗に太っていると言われても気にすることはない。自分でもよくわかっている。

 今の患者さんは優しい方だ。もっと遠慮なく私の体形をいじる患者は絶えない。偶然を装って胸を触られたりすることもしょっちゅうある。

 中高生の間はそうでもなかったのに、看護学生になり、ひとり暮らしを始めてから突然太った。いや、突然という言い方は無責任だ。すべては私自身のせい。

 勉強や実習で余裕がなくなり、食べることでストレス解消をしていた。そして運動する体力も気力も、すべて実習で消えていった。

 看護師になったときはもう立派なぽっちゃり体形になっていた。