「いいや。純粋に、ふたりきりになりたかったんだ」

 私は口に運ぼうとしていたケーキを、ぽろりとフォークから落としてしまった。

 ゆっくり視線を上げると、進藤先生と目が合う。

「どどど、どうしたんですか、進藤先生」

 病棟では、絶対にそんなこと言わないキャラなのに。

 自分の心拍数が爆発的に上がっているのがわかる。

「どうもしていない」

「いや、でもいつもはもっとクールというか……」

 不愛想とは言わずに、慎重に言葉を選ぶ。

「仕事中はこっちも真剣だからな。次のオペのことを考えていると、自然に表情筋が固まる」

 なるほど、病院にいる間はずっとスイッチオン状態なのね。

 ドクターにも色々なタイプがいる。

 若い先生は、ほとんど看護師を相手にしない。先生同士で仲良く話しているのは見かけるけど、看護師には用事がない限り話しかけない。

 逆に気さくなのはベテランドクターだ。心に余裕があるからか、病棟の様子を知る必要があるからか、看護師にも話しかけてくれる。

 一番タチが悪いのは原研修医みたいなタイプ。自分のお気に入りの看護師には積極的にコミュニケーションを図るけど、そうでない人には徹底的に無視かパワハラ。