「食事が済んだら、高場さんとふたりでお話しさせていただきたい」
「そうね、ふたりっきりで……って、本当に? あなたそんなこと、今まで言ったことなかったじゃない」
お母さんが目を丸くする。
そんなに驚くということは、今まで食事だけして、そのまま解散になったお見合いを繰り返してきたということか。
進藤先生、本当に結婚をする気がないんだ。恋愛より仕事一筋って感じだものね。そこが素敵だけど。
ん? じゃあどうして、私とふたりきりで話がしたいのかな?
疑問に思いつつ、自分の分の料理を食べ終えた。すると進藤先生のご両親とおじさんおばさんは、すぐに席を立った。
「じゃあ、ごゆっくり」
あとは若いモンだけで……ってやつか。
食べ終えた食器が下げられ、目の前にはコーヒーとケーキだけが残る。
「どうぞ。俺はいらないから」
自分の分のケーキを私にくれる進藤先生。普段の私なら満面の笑みを浮かべただろうけど、今は少し違う。
彼に見られていると思うと食べにくいな。
進藤先生はじっと私を見ていた。微かに口角が上がっている。
感じたことのない優しい視線に、胸が高鳴った。



