だからか、「意外と優秀なお嬢さんなんだな」と進藤先生のお父さんが言った。「意外」は余計よ。

「おばさん、知ってたの?」

「そういえばそうだった。佑さん、千紗ちゃんと同じ病院に勤めているんだった。忘れてた」

 忘れてた、じゃ済まされないよ。

 実家の病院の名前が重すぎて、肝心の勤務先を忘れてしまったのか。

 そりゃうちの病院は全国的に見れば、それほど大きいとは言えない。けど、地域医療には欠かせない存在なんだからね。

「じゃあ、今さら特に聞くこともないわね」

 進藤先生のお母さんが、あきらかにがっかりした顔をした。

 すでに知り合っている女性など、お呼びじゃないのだろう。新たな刺激を求めているわけだしね。

「そうでもありません。知っているのは名前と顔くらいで、俺は高場さんのことをほとんど知りません」

 進藤先生がそう言っている間に、食事が運ばれてきた。

 コースではなくランチセットのような感じ。けど、ひと皿ひと皿が高級そうで品数も多い。

 お刺身、茶わん蒸し、お吸い物、和牛のひとり鍋、などなど。

「せっかくですから、いただきましょう」

 もう帰りたそうな顔をしているお母さんは、やる気のなさを全開にして箸を取った。