──よしっ。

 私は心の中でガッツポーズをした。

 お見合いの待ち合わせ場所は、うちの実家の財力では絶対に行けないような、高級料亭だった。

 茉莉ちゃんが着るはずだったレンタルの着物を着つけされ、庭園が見える廊下をポテポテ歩く。

 着物でよかった。体形をカバーしてくれるし、よっぽどでなければ入らないってことはないものね。

「千紗ちゃん、ごめんね。茉莉が迷惑かけて」

 久しぶりに会うおばさんとおじさんが同席するためについてきてくれていた。

 おばさんは茉莉ちゃんが駆け落ちしたショックのせいか、げっそりとやつれたように見える。

「全然いいですよ」

 それにしても先方は、よほど変わった人たちなんでしょうね。

 と言いかけてやめた。目的の部屋に着いたから。

 お店の人の案内で部屋の中に入った私は、しずしずとまつ毛を伏せたまま自分の席に着く。

「あらあ……これは今までにお会いしたことがないタイプのお嬢さんね」

 先方のお母さんの声だろう。決して喜んでいる様子ではないが、さげすまれている風でもない。

「初めまして。代理で参りました、高場千紗と申します」

 顔を上げると、お見合い相手と目が合った。