「いただきます」
シャンパンで乾杯したあと、ぺろりと前菜をたいらげた。
次いで北京ダック、フカヒレの姿煮など、いわゆる高級食材を使った料理がやってきた。
食べたことのないものは、進藤さんの食べ方を見て真似する。看護師はそもそも、先輩の手技を見て覚えるのが得意だ。
「うわあ、こういう食感なんですね、フカヒレって。美味しい」
なにを食べても「美味しい」を連発する私を、進藤さんはにこやかに眺めていた。
美味しい料理と好きな人の笑顔があって、私は世界一の幸せ者だ。
しかしその幸せは、無遠慮な靴音によって遮られた。
賑やかな話し声が聞こえてきたと思って、ふとエントランスの方を見た。
「ひっ」
思わずスプーンを落としそうになった。
六人ほどで入店してきた彼らの中に、知った顔があったからだ。
あれは原研修医と、福田さん。私服だから一瞬わからなかったけど、間違いない。
「こんなところでお食事をご馳走してもらえるなんて、夢みたいです」
「やっぱり将来のドクターは違いますね~」



