はしゃぐ私を見て、進藤さんが呟くように言った。
「そういえば、千紗は男女交際のなにもかもが初めてだったな」
男女交際のなにもかもって、デートやキス、そしてその後のことだろうか。
恥ずかしながら交際経験ゼロの私は、こくりとうなずいた。
面倒くさいと思われるかもしれないけど、婚約までしているんだもの。嘘をついても仕方がない。
「素直だな」
もう何度目かわからない褒め言葉をいただいた。
「よかった。じゃあ、千紗にとって俺は最初で最後の男になれるわけだ」
進藤さんは面倒くさそうな顔をせず、涼しい顔で口の片端だけを微かに上げた。
その顔に見惚れる暇もなく、前菜が運ばれてきた。
「食べ放題じゃなくて悪いな。でも品数は多いから」
クスクスと笑う進藤さん。
「今はそんなにたくさん食べなくても大丈夫です!」
ダイエットを始めてから、必要な分以外は食べなくても我慢ができるようになってきた。
仕事のストレスでどうしても、というときだけは甘いものを解禁したりするけど、その分動くように気をつけている。
ただ、気をつけているだけで、食べられなくなったわけではない。
出された食事は、きちんと残さずいただきます。結構量が多くても、大丈夫です。



