「もうすぐだ」と言われて車窓から見上げた建物に、唖然とする。
そこは誰もが知っているであろう、高級ホテルだった。
同じようなグレードのホテルに、看護師仲間とランチビュッフェを食べに行ったことがある。
しかし夜の闇の中、ライトに照らされて堂々と建つ姿は、昼とはまったく違う壮大さを感じさせる。
外観を見ただけで圧倒されてしまった私を、進藤さんがエスコートして降車させる。
「中華は好き?」
「はい、大好きです! と言っても、庶民的な中華しか食べたことはないんですけれど」
ラーメン、から揚げ、ギョーザ……中華料理で思い浮かぶものは、全部大好きだ。
ワクワクが止まらない私が案内されたのは、二十九階にある中華レストランだった。
エキゾチックな雰囲気のエントランスを通り、予約されていた席へ。
「わあ……」
まるでドラマの世界のような、見渡す限りきらめく街の夜景。
「こういうところは初めて?」
「もちろんです。デート自体、進藤さんが初めてですってば」
この前の港が間近に見えるレストランも素敵だったけど、今回は雲の上にいるみたい。夜景は夜景でも、全然違う。



