ぽっちゃりナースですが、天才外科医に新妻指名いただきました


 いいのよ。彼がこんな私でいいって言ったんだもの。進藤さんを信じるの。

 私は覚悟を決めて目を開け、「これでいいんだ」と鏡の中の自分に言い聞かせた。

 メイクをし、オフショルダーのトップスにひざ下までのスカートを合わせた。全体を緩く巻いた髪のサイドをねじってピンで留めて完成。玄関が開く音がした。

「ただいま」

 進藤さんの声が聞こえただけで、心臓が跳ねあがる。

 ダメダメ、意識しすぎ。自然にするのよ。

「おかえりなさい」

 バッグを持って玄関に向かうと、進藤さんがいいものを見つけた子供のような顔で、にっこりと笑った。

「いいな、きれいな奥さんが出迎えてくれるの」

「ええっ?」

 いきなりの先制攻撃。私はもう膝から崩れ落ちそうになる。

「すっぴん同様で必死に仕事をしている君も、もちろん好きだけど。こういうのもたまにはいい」

 たしかに日勤の日は、帰ってくる時間がほぼ一緒ということで、ろくな格好でお出迎えできていない。

 仕事の後は薄いメイクも汗でドロドロ、ふんわりしていた髪はぺったんこ、疲労で表情まで死んでいる。