「谷口さん、すみません」
声をかけると、谷口さんは笑顔で振り返る。すらっとした体が眩しい。
「はい、どうしました?」
同期とはいえ職種が違うので、あまり話したことがない。なんとなく敬語になってしまう。
「いきなりでごめんなさい。患者さんのことじゃないんですけど」
「えっ?」
「あの……痩せる食事の仕方などを、教えていただけないかなって……個人的に……」
小さな声でぼそぼそと相談すると、はじめはキョトンとしていた谷口さんがだんだん笑顔になってきた。
「ダイエットですね! それは栄養の摂り方がとても重要なのです」
「そうですよね。実は野菜とこんにゃくしか食べなかったら、昨日ふらついちゃって」
「そんなの、絶対にダメです!」
谷口さんは、非常にまじめな栄養士だ。
それは患者さんに対しても、そうでなくても変わらないらしい。栄養指導すべき人を見つけると、話が止まらなくなるタイプだった。
「経管栄養の液体、アレが一番いいです。栄養バランスがとれていて、脂質がないので」
「そうなんですか」



