「化粧をしていると、顔色がわかりにくいな。いったいどうして貧血なんて」
「へ、へへ……」
笑ってごまかす私を、進藤さんはぎろりと鋭い視線でにらんだ。私は真顔に戻る。
「ムリなダイエットでもしたんだろう」
すぐにバレた。デートでも小食ぶって説得されたばかりなのに。
小さくなった──現実はぽっちゃりのまま、全然小さくなっていないのだけど──私に、進藤さんはドクターのときの厳しい顔で続ける。
「食事を抜いたな? おそらく、炭水化物、たんぱく質、脂質、糖分、油分、太りやすいイメージのものを排除しただろう」
「はい」
「そんなことをして、健康にいいと思う?」
「思いません」
「じゃあ、悪いことをしたと思っている?」
「思います」
「よろしい。では、バランスよく食べなさい」
尋問を終えた進藤さんは、苦笑を漏らした。やっと緊張から解き放たれた私は、ホッと息を吐く。
「同期に栄養士はいないのか」
「あ、います。病棟に来てくれている谷口さん」
「ああ、彼女か」



