今日も外科病棟は忙しい。

 病棟看護師の私、高場千紗(たかばちさ)は午前十時の時点ですでに息切れしそうになっている。まだ二十四歳なのに情けない。

 八時過ぎに出勤し、九時まで担当患者の情報収集に徹する。

 それぞれの主治医の指示や前日の看護師の申し送りなどを電子カルテで確認する。

 患者それぞれの服薬、点滴、他科診察予約、リハビリなどなど、やることは目白押し。画像センターやリハビリ室への送迎は看護補助者さんがやってくれるけど、それ以外はすべて看護師の仕事だ。

 薬や点滴のことだけでなく、退院の処理、手術準備、検査出し……数えればきりがない。

「はあ、はあ……」

 朝から一番のオペ患──手術を受ける患者さん──の準備をしてオペ室に運んだところから、もう疲れていた。

 うちの病院の離職率は高く、いつも人手不足。四十五床あるベッドのうち四十床は常に埋まっている。日勤看護師ひとりあたり、五、六人の受け持ち患者がいる。子供の病気や看護師自身の体調不良で欠勤者が出ると、その数は当然増える。

「ひとりあたりの受け持ち患者が多すぎますよね。いつか事故が起きますよ」

 ひとつ下の後輩が、テーブルの上で点滴を用意しながらため息を吐いた。

「本当だよね」

「ねえ……って、高場さん、汗すごっ」