――…妖艶な獣の色欲は、とどまることを知らないのだと思い知らされた。



「…、も、…だめ…っ」

「足りない」

「紫月……、ひぁ…!」

「朱里…っ」



夜の摩天楼の最上階。

灯火の粒と化した街並みは、二度と赤色に染まることは無い。

どこか穏やかさすら感じる夜のブラックシティ。見下ろす月が麗蘭街を照らしていた。



「考え事かよ?」

「っちがう、」

「…ほんっといい度胸してんな…」

「ん、あっ…!やぁ…っ!」



正直に漏れてしまう声に、満足げに上がる彼の口角。

妖しい月の光だけがわたしたちを照らしている。

彼の声が掠れる。わたしの身体は快感をさがし、身をゆだねる。



(…紫月、ほんと、かっこいい…っ)



――…すみれ色のその眼光が、今日もわたしを射抜くのだ。