「悩んだりもしましたけど、この子を授かることができて幸せなんです。だから、謝らないでください」
私はそう言って、心の底から微笑んだ。
これ以上謝られてしまうと、この子が宿ったことさえも間違いだったと言われているようだ。
「それとも、やっぱり迷惑でしたか?」
「そんなことあるわけないだろう……! もちろん、俺の子ならこんなに嬉しいことはない」
言葉と共に大きな溜息をついた景光さんのかんばせには、もう先ほどまでの動揺も後悔も浮かんでいなかった。『こんなに嬉しいことはない』という言葉が嘘ではないと分かって、彼と再会して初めて胸の奥が温かくなる。この温度が安堵であると理解すると同時に、景光さんが静かに笑った。
「先ほども言ったが、この子の父親が誰であろうと君に告白するつもりだった。初めての妊娠に不安であろう君に優しくして、囲い込んで……どこにも行けなくしてやろうと思うぐらいには、本気だったよ」
「え、そ……そう、なんですか?」
「そうだ。……俺に大事に大事に囲われるの、嬉しかったのか? 顔が赤い」
「……」
ぐう、と羞恥と照れで喉が鳴る。
頬が赤くなっているのは、鏡を見なくてもよく分かった。どこか懐かしい、じわじわと顔が火照っていく感覚がして、心臓の辺りがうずついてしまう。
そんな私を見て景光さんは『仕方ないな』とばかりに甘ったるく笑って、私の頬を優しく撫でてくれた。
「参ったな、俺はこれを怒られるつもりで告白したんだが。あんまり可愛い顔をされるともう一度やりそうだ」
「う……」
「しかし……それならどうして俺の前から姿を消したんだ? 君が本心から離れたいと思っていないのは、手紙に残った涙の染みで何となく分かったが」
「あ、それは……」
彼の疑問で、今まで意識の外に追い出していた『あの日』の出来事が脳裏に蘇る。景光さんが私を想ってくれているのが本当ならば、あの会話は何だったのだろう。
あの日の自分の行動や、何を思ったかをかいつまんで景光さんに説明すると、彼は一度顔を手で覆って、疲れたように微笑んだ。
「……なるほど、そういうことか。こればかりは神の悪戯だな」
私はそう言って、心の底から微笑んだ。
これ以上謝られてしまうと、この子が宿ったことさえも間違いだったと言われているようだ。
「それとも、やっぱり迷惑でしたか?」
「そんなことあるわけないだろう……! もちろん、俺の子ならこんなに嬉しいことはない」
言葉と共に大きな溜息をついた景光さんのかんばせには、もう先ほどまでの動揺も後悔も浮かんでいなかった。『こんなに嬉しいことはない』という言葉が嘘ではないと分かって、彼と再会して初めて胸の奥が温かくなる。この温度が安堵であると理解すると同時に、景光さんが静かに笑った。
「先ほども言ったが、この子の父親が誰であろうと君に告白するつもりだった。初めての妊娠に不安であろう君に優しくして、囲い込んで……どこにも行けなくしてやろうと思うぐらいには、本気だったよ」
「え、そ……そう、なんですか?」
「そうだ。……俺に大事に大事に囲われるの、嬉しかったのか? 顔が赤い」
「……」
ぐう、と羞恥と照れで喉が鳴る。
頬が赤くなっているのは、鏡を見なくてもよく分かった。どこか懐かしい、じわじわと顔が火照っていく感覚がして、心臓の辺りがうずついてしまう。
そんな私を見て景光さんは『仕方ないな』とばかりに甘ったるく笑って、私の頬を優しく撫でてくれた。
「参ったな、俺はこれを怒られるつもりで告白したんだが。あんまり可愛い顔をされるともう一度やりそうだ」
「う……」
「しかし……それならどうして俺の前から姿を消したんだ? 君が本心から離れたいと思っていないのは、手紙に残った涙の染みで何となく分かったが」
「あ、それは……」
彼の疑問で、今まで意識の外に追い出していた『あの日』の出来事が脳裏に蘇る。景光さんが私を想ってくれているのが本当ならば、あの会話は何だったのだろう。
あの日の自分の行動や、何を思ったかをかいつまんで景光さんに説明すると、彼は一度顔を手で覆って、疲れたように微笑んだ。
「……なるほど、そういうことか。こればかりは神の悪戯だな」
