息が苦しくてほんの少し開けてしまった唇に割り込んでくる舌が歯列をなぞるように丁寧に這う。
一気に押し寄せる快楽にキスだけで意識が朦朧とする。
口内を犯す舌は生き物のように動く。柊のバスローブにしがみついていた手がいつの間にか滑り落ちる。

「…ぅ、…ん、」

自分の声だとは思えないそれが耳の鼓膜を揺らすと羞恥心でどうにかなりそうだった。
柊がようやく顔を離したときには既に琴葉の体は重力に従って指一つ動かせないでいた。

「なんだよ、そういう目で見るな。余裕がなくなる」

そう言いながらバスローブを脱ぎ捨てる柊の上半身に目がいく。
普段はスーツを着ているがどのような裸をしているのかなど考えたことはなかったから想像以上に精悍な体つきに顔を背けたくなった。
バスローブを脱ぎ捨てた柊が覆いかぶさってくる。彼の男らしい体が琴葉に密着する。
幸い、バスローブ一枚で何とか直接的な接触を避けることはできたが…それでも引き締まった体を見て心臓が激しい音を立てる。

「…ま…って」
「まだ何もしてない」

柊の手がすっと琴葉の太ももを撫でる。一瞬で体が大きく跳ねて、柊がそれに合わせて琴葉の顔を覗き込む。待って、といったが本気で止めてほしいわけではないことを柊は理解しているようで琴葉をまるで獲物を狙っている野獣のような目で見下ろす。