今でも思い出すと胸がズキズキと痛みだすが、柊のお陰で過去を過去として振り返ることが出来るかもしれない。
柊はそのあとも暫く学生時代の話をしていた。
知らなかったが、琴葉が“事実”に気づいてしまった後、柊は春樹に接触していたらしい。何をしたのかまでは聞かなかったが、琴葉以上に彼に怒りをぶつけてくれていたのかもしれない。
幸せな気分のまま、瞼を下ろそうとすると体に重みを感じた。

「あれ、」

気がつくと、柊が琴葉に覆いかぶさっていた。閉じかけていた瞼が一気に開く。
すぐにわかる。あぁ、抱かれるということを。
彼の目が普段以上に鋭く、琴葉を射抜くように見るからだ。それだけで全身に熱が宿る。
「嫌じゃないか?」
「まさか、」

首をゆらゆらと振る。いつも彼は嫌かどうか確認をする。
(大切にされていたんだ…)
セフレかと思っていたことを恥じた。こんなにも、自分は愛されていた。

「どうしようもないくらいに、琴葉が好きだ」
「…私もです」

近づく顔に目を閉じるとすぐに激しく唇に割って入る舌が琴葉の思考を停止させる。
パジャマの中に手が入るのを感じて枕の端をギュッと掴み、押し寄せてくる快楽を必死に受け止めた。