(どういうこと?彼が私のことを好き…?)
戸惑いつつ、琴葉は慎重に言葉を返した。

「それは…私の好きと同じでしょうか」
「同じだ。恋人になってほしいということだ」
「…夢?」
「夢じゃない。俺と付き合ってほしい」
「はいっ…!もちろんです」

次から次へと溢れる涙はきっと気持ちが通じ合ったことへの嬉しさからだ。
まさか両想いだとは思ってもいなかった。
しかし、柊の琴葉を見下ろす優しく包み込む眼差しは確かに愛があるように思う。
柊が何も言わずに琴葉に影を作り、気づくと顔を近づけられ唇が重なる。
深いキスではなく、触れるだけの優しいキスだった。
嬉しさが募れば募るほど、まるで夢の中にでもいるような気になる。
何度か夢かな、と呟く度に柊に違うと否定され、現実だと理解する。

柊がシャワーを浴びて、二人で広すぎるベッドの上で肩が接しそうなほど近い距離にいた。
付き合ったということは、両想いで、柊も自分を好いてくれている。それは当たり前のことではなくて奇跡だと思った。

「あの、聞いてもいいですか」
天井を見ながら、柊に声を掛けた。すると、柊もまだ起きていたようで「もちろんだ」と返してくれた。
「大学生の頃の話です。どうやっても思い出せなくて。本当に柊さんと私に接点はあったんですか?」

クツクツと喉を鳴らす音が聞こえたかと思うと、ベッドサイドテーブルの上で光るライトが揺れる。振り向くと柊が肘を立て、琴葉の方を見ていた。