目が覚めたのは誰かの視線を感じたからだった。
いつも以上に重い体のせいで寝返りを打つこともできずにいる琴葉は薄っすらと目を開ける。
と。

「うわっ…」
「何だよ。朝から大きな声出して」
「何で不破さんが…」

隣には柊が琴葉の顔を覗き込むような体制で寝ている。しかし彼からシャンプーしたばかりの香りがして既に起床していたことがわかる。
時間を確認すると10時だった。

「何でって起きて一人だったら寂しいかと思ったからだよ」
「…寂しい?」
「寂しくないのか」
「寂しくは…ありませんが」
「ふぅん」

不満げな瞳が琴葉を映す。そして琴葉はあることに気が付いた。それは、自身が裸だということだ。
危うくそのまま上半身を起こしてしまうところだった。琴葉は顔を赤らめてホテルのようなフワフワの羽毛布団をかぶって顔の半分まで隠す。
昨夜のことはあまり鮮明には覚えていなかった。お酒の力も相俟って抱いてほしいなどと言ってしまったが柊に抱かれたことは全く後悔はしていなかった。あの熱いキスに愛撫、それらを思い出すだけでじんわりと腹部に熱が宿る。それを本人に言えるはずもないが、琴葉の赤面した顔を見たら誰だって昨夜を思い出していることは安易に想像できるだろう。