酔っ払いやヤクザの類なら幽霊よろしく完全スルーの特攻技を決め込むのだが、自分と同い年ほどの青年となると別。
何かに巻き込まれた罪なき一般人なら、ぶっちゃけただの怪我人である。
見捨てる意味は無い、むしろここで見て見ぬふりをしたら外道だ、死んだ後地獄に堕ちればいい。
「…はぁ」
仕方なくその青年の傍に駆け寄って、携帯を光らせて傷の具合を確認する。
…なるほど、これは危険そうだが、医者に見せなくともまぁ何とかなりそうだ。
ここで救急車を呼んだり病院へ連れ込むのはタブーである。繁華街ではそういう暗黙のルールがあるのだ。
よく知らんが、顔が割れるとか敵にバレるとか、こっちの世界にも色々あるらしい。