拾った総長様がなんか溺愛してくる(泣)【完】




「………」



そうだ、確か以前もこの辺りで、空き教室から離れた後…。



「───やぁ、また会ったね」



少し空いた窓から入り込む風。それによって靡く、深い紺色の長髪。軽く手を上げてひらひらと振る彼の表情には、純粋な笑顔。


彼の視線の先に居るのは私だ。一瞬誰だっけ、と首を傾げて「あ、」と声を上げる。記憶の片隅から思い出したのは、あの日の出来事。初めて倉崎くんとまともに話した、あの日の。



「日下くん…?」



やっぱり少し先の曲がり角から現れた彼は、まるで私がここに居ることを知ってたみたいに、流れるような仕草で話し掛けてきた。



「やだなぁ日下くんなんて。
嶽って呼んでって言ったでしょ?」



そんなこと言ってたっけ?と困惑する私に、日下くんはにこにこ笑って頷く。他人と何を話したか覚えているほど、記憶力はあまり良くないのだ。


彼は私から視線を外すと、今度は倉崎くんの方を見て微笑を浮かべる。さっき私に向けていた笑顔とは違って、薄い笑みだ。



「…やぁ倉崎。こんな所で会えるなんて、嬉しいな」


「……何でてめぇがここに居る」



にこやかに挨拶する日下くんに、何故か倉崎くんは低く唸るような声で言葉を返した。日下くんを睨み付ける倉崎くんの瞳は揺れていて、心做しか体も強ばっている。