手放せず持ち続ける内、どうやら愛着が湧いてしまったらしい。捨てる機会が訪れず、気付けばお守りのように握り締めるようになった。
『…これ、くれる、の?』
確かお袋が『アンクレット』だとか言っていた。俺はそういうものには詳しくないから、よく覚えていないが。
キラキラと光に反射する銀細工。それを頬を紅潮させて眺めた紫苑は、ぎこちなく問いかけてくる。
『…。…あぁ』
瞳を輝かせて、紫苑は笑う。嬉しそうに。
けれどその顔は、駄目だ。だって俺はまた、自分の為の行動をした。紫苑なら喜んでくれるだろうと踏んで、分かった上で、俺はそれを手渡した。
―――それがあれば、紫苑は俺を忘れられない
例え記憶が褪せたとしても、完全に褪せることはない。それを持ち続ける限り、紫苑の中から俺が消えることは無いのだ。
何処に居たって探し出すなんて、そんな格好良いことは言えない。本物のヒーローみたいなこと、弱くて狡い俺には言えない。
せめて、だからせめて、紫苑が俺という存在を忘れ去らないように。
これは誓いでも、約束でもない。このアンクレットに込められたものは、口約束と、仄暗い執着のみ。

