触れないで、杏里先輩!

すると、

「まず俺のところついてきて。その後、美桜についていくから」

拒否出来ないような笑顔で言われ、周りに男子生徒もかなり居たので素直についていくことにした。

人が多い下駄箱をビクビクしながら出ると、亜季ちゃんにバイバイを言うのを忘れたことに今更気付いた私は、後でメールしようと思った。


「一年ってもうすぐ校外学習じゃない?」

「来週です」

「亜季ちゃんにくっついていなよ?」

「言われなくともそうします!」


帰りの道も昼のように杏里先輩が沢山話題を振ってくれて、いつもは下を向いて物凄く長い距離に感じる道が、あっという間に駅の前。
そこで今更私は気付いた。


「あっ!朝、杏里先輩、駅とは逆方向から歩いて来ましたよね!?」

先輩の帰る方向が、逆方向の可能性が高いということに。